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知的財産権とはなにか?日本の法律をベースに考えてみる【タイの知的財産権コラム第1回】

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 今回より数回にわたり、タイの知的財産権、特に産業財産権についてご説明します。 第1回目である今回は、その前提としてそもそも「知的財産権とは何か」という点につ いて、まず日本法をベースにご説明したいと思います。  

知的財産権とは?スマートフォンを事例に考える

 知的財産権とは、人間のさまざまな知的活動によって生まれたアイデアや創作に与えら れる財産としての権利の総称であり、特許権・実用新案権・意匠権・商標権・著作権・育成者権等が含まれます。このうち、産業政策上重要とされる、特許権・実用新案権・意匠権・商標権は「産業財産権」と総称され、日本では特許庁がこれを所管しています。  

例えば、スマートフォンを開発・生産し、それを販売するという状況を想定してみます 。

この商売がヒットするには、商品自体が魅力的である必要があります。具体的には「電池性能が良いこと」、「快適な操作性をもたらすボタン配置」等の特 徴は購入を検討する顧客にとって魅力的な要素となりますし、「機器全体の色彩やデザインが優れていること」といった点も魅力的な要素となるでしょう。また、高品質なスマー トフォンであるという信用が得られた場合には、「商品名」自体に信用が発生し、そのブランド力を目当てに購入されるという場合もありえます。  

上記における「電池性能を向上させるための工夫に関するアイデア」「操作性を良くす るためのボタン配置に関するアイデア」「機器全体のデザインイメージ」「商品名」といった要素は、販売戦略において極めて重要な要素といえますが、これらは形のある「物」 ではなく、形のない「情報」ですので、模倣されやすく拡散しやすいという性質がありま す。このような「財産的価値を持つ情報」を保護し、発明者や創作者等に一定の利益を与え ようとするのが、知的財産権制度です。特に、「産業財産権」については、特許庁に出願 し登録されることで一定期間、独占的に実施・使用することができるという強力な保護を受けることができます。  

特許法・実用新案法・意匠法・商標法。アイディアによって適用される法律

 上記の例では、「電池性能を向上させるための工夫に関するアイデア」のような高度な 技術に関するアイデアは「特許法」で、「操作性を良くするためのボタン配置に関するア イデア」という、特許法の保護対象に比べて高度でないアイデアについては「実用新案法 」で、「機器全体のデザイン」のような物のデザインに関するアイデアについては「意匠法」で、商品名については「商標法」で、それぞれ保護されます。(実際にはこれらの区別は明確でない場合もあり、例えば「ボタン配置」の例では、これを特許法や意匠法で保護することも可能ですし、場合によっては立体商標という形で商標法によっても保護され る可能性があります)。  

これらについて独占権を得た場合、侵害行為者に対してその実施・使用をやめるよう請求できるという権利(差止請求権)と、侵害行為によって生じた損害の賠償を求める権利 (損害賠償請求権)を行使可能となります。その結果、自らがアイデアや創作物等につい て独占的に実施(使用)できるということになります。またこのような権利は特許庁への 登録時に公開されますので、権利取得段階で模倣を牽制抑止するという、予防的効果も果 たすことができます。  

さらに、これらは「財産」権ですので、他人に譲渡したり、実施(使用)許諾をするこ とで対価を得ることもできます。そういう意味では、例えば新技術を開発した者がその技 術で製品を製造販売する場合に、「他社の模倣行為を禁じ独占的に生産活動を行なうため に」特許権を取得する、という利用方法ではなく、新技術それ自体を「売り物とするため に」特許権等を取得するということもあり得ます(但し商標の場合には、そのような目的での出願行為による不都合が近時問題となっているところではあります)。  

 以上、日本の産業財産権について簡単にご説明いたしました。ではタイにおける産業財産権保護はどのように行なわれているかというと、実用新案権の代わりに「小特許権」という権利がある、小特許権(実用新案権)や意匠権の存続期間が日本より比較的短い等細かい点に違いがあるものの、基本的には日本と同じ枠組みで保護が図られています。詳細につきましては、次回以降、日本法における保護内容と比 較しながらご説明します。  

簡単ではありますが、今回は産業財産権を中心に知的財産権の概要をご説明いたしまし た。次回は「タイの特許法」にフォーカスしてご説明させて頂く予定です。


TNY国際法律事務所(TNY Legal Co.,Ltd.)

共同代表 日本国弁護士・弁理士 永田 貴久

タイにおける商標・特許等の出願、知的財産権の権利行使その他の知財業務のほか、会社設立、労務対応、合弁契約書等の各種契約書の作成、M&A等のタイ法に関するサービスを提供している。

HP: http://www.tny-legal.com/ 

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