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タイの著作権法について【タイの知的財産権コラム 第6回(最終回)】

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 前回まで、特許法・商標法を中心に、タイの知的財産権法についてお伝えしてきました。 

 今回は、タイの「著作権法」についてご説明したいと思います。

 - 著作物とは?

 著作物とは、日本においては「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(日本著作権法2条1項1号)と定義されており、タイにおいても、概ね同様の概念として捉えられています(タイ著作権法6条)。典型的には、小説や絵画、音楽などの芸術作品をイメージしてもらえるとわかりやすいかと思います。「単なる事実の伝達」、「時事の報道」、「法律」、「判決」等は日タイともに著作物に含まれません。

 特許発明と異なり、著作物であるためには、高度性(進歩性)は要求されません。上記の定義にあてはまる限り、高名な画家が描いた絵画にも、幼児が描いた落書きにも、等しく著作権が発生します。

 また、登録によって発生する特許権や商標権と異なり、著作権は創作の瞬間から自然発生します(無方式主義)。

 - 日本の著作物はタイでも保護される?

 ある国の法律は、その国の領域内にしか適用されないのが原則です(属地主義)。従って日本で創作された著作物が日本国内において著作権法の保護を受けられるとしても、他国において必ずしも同様に保護を受けられるとは限りません。

 しかしながら、この原則通りに取り扱うと、例えば、日本で作成された著作物は誰でもタイにおいて自由に複製でき、販売する権利を持つということになります。このような結果は、特にインターネットが発達した現代においては著作者の保護に欠ける事態を生じさせ、ひいては各人の創作意欲を失わせる事態を生じさせてしまいます。

 そのような事態を避けるため、ベルヌ条約という条約が存在しています。この条約は、いわば世界著作権を認めるもので、同盟国は、お互いの国の著作物をお互い保護し合うことにしましょう、という点を取り決めている条約です。そして、日本もタイもこのベルヌ条約に加盟しているため、お互いの国の著作物はお互いの国の著作権法で保護を受けることができるということになります。

 したがって、日本の著作物もタイ国内においてタイ著作権法による保護を受けることができます。

 - 職務著作は社員のもの?それとも会社のもの?

  以上の通り、著作物に生じた権利は日タイ両国において相互に保護を受けることができるのですが、保護の内容、侵害時の対処法等について、両国の著作権法には若干の相違があります。ここからは、日タイの著作権法で、特に異なる規律が適用されている点についてご説明します。

 会社が業務を行うにあたり、従業者に何らかの著作物の作成を命じる場合がありますが、このような過程を経て完成した著作物を「職務著作」といいます。この「職務著作」についての権利が誰に帰属するのかについて、日本とタイとで著作権法上の規定が異なっているため注意が必要です。

 具体的には、職務著作についての権利が、日本では原則として会社に帰属するのに対して、タイでは原則として従業者に帰属するということになっています。そのため、何の対策も行っていなかった場合、「業務の過程で作成した著作物を使用しようとしたら、従業者から著作物使用の停止を求められた」という事態も生じかねません。このような事態を避けるため、契約・規則等で権利の帰属を明確にしておくのがよいでしょう。

 - 模倣品を発見した!そんなときは…

  タイ国内において、自ら(自社)の著作物が模倣されているのを発見する場合があるかもしれません。このような場合、自ら民事訴訟等を提起して差止を求めることもできますが、タイにおいては、王立タイ警察(経済犯罪取締部(ECD)やテクノロジー犯罪取締部(TCSD))に告訴を行い、刑事手続に乗せることが、証拠隠滅防止等の観点から有効です。

 ただし、告訴が受け付けられるためには、タイ特許庁(DIP)にその著作物についての真正な権利者である点が「登録」されているかどうかが重視されます。先に述べた通り、著作権自体は登録なく自然発生する権利ですが、実効的な保護を図るためには、タイ特許庁への「登録」が重要な意味を有するということです(この点、日本の著作権登録制度があまり活用されていないのとは対照的です)。

 なおタイには、刑事手続において侵害者に科される罰金の2分の1を、著作権者が裁判所に請求できるという、日本にはないユニークな規定が存在します。

 以上、タイの著作権法について、簡単にご説明させて頂きました。

特に、職務著作に関する規定が日本と異なる点、刑事手続、登録制度を活用すべき点は重要ですのでご注意ください。

 全6回に渡ってお送りして参りました本コラムですが、今回が最終回となります。ご愛読ありがとうございました。

知的財産権に関する疑問等がございましたら、お気軽にご相談ください。

 

共同代表 日本国弁護士・弁理士 

永田 貴久

タイにおける商標・特許等の出願、知的財産権の権利行使その他の知財業務のほか、会社設立、労務対応、合弁契約書等の各種契約書の作成、M&A等のタイ法に関するサービスを提供。

HP: http://www.tny-legal.com/ 

TEL:+66(0)2 117 0798

問い合わせ先:info@tny-legal.com

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