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タイの商標制度について その1【タイの知的財産権コラム第4回】

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 今回から、タイの商標制度についてご説明します。

「正直、タイで特許の出願までは考えていないが、商標出願には興味がある」とお考えの方も多いのではないでしょうか?近年では、日本の地名やブランドが海外で勝手に出願される事例も頻繁に報道されており、国内外の商標管理にご関心をお持ちの方が増えてきているように思います。

 日本で問題なく商標権を取得していたとしても、海外でもその商標が使えるとは限りません。商標権は国ごとに発生するものであり、日本で取得した商標権の効力は、日本国内にしか及ばないのが原則だからです。そのため、特に重要なブランドやハウスマークは、海外でもきちんと手当をしておくことが重要です。

 以下、商標権に関する基本的な内容をご説明致します。

― 商標権は「商標」と「指定商品・役務」との組合せ

 商標権は、「商標」(trademark)と「指定商品役務」(designated goods / designated services)の組合せによって定まります。これは、商標法を理解するにあたって非常に重要なルールです。このルールは、タイや日本に限らず、原則として商標法が存在する全ての国に共通します。

 ある名称について商標出願をする場合、その名称を独占的に使用する権利が直ちにあらゆる商品役務に対して及ぶことになるわけではありません。出願の際に指定した「指定商品・役務」の範囲に限ってその名称を独占する権利が与えられます。

例えば、私が所属するTNY国際法律事務所も、タイで「TNY」という「商標」について商標権を保有していますが、その名称を独占的に使用できる権利は、「契約書の作成」「出願業務」「法律相談」等、出願時に指定した「指定商品役務」の範囲に限られています。そのため、当該「指定商品役務」に全く関係のない役務、例えば、「飲食店の経営」に誰かが「TNY」の名称を用いたとしても、それを止めることはできません。

 完全な独占を求めて、あらゆる範囲の商品役務を指定して、出願することも理論上は可能ですが、それには莫大な費用が必要となるため、費用対効果が極めて悪い行為になってしまいます。そのため、通常、自己の業務(及びその周辺業務)に限った出願を行います。

 「具体的にどのような商品役務を指定するか」という点は、商標権の確保にあたって非常に重要な問題ですので、実際に販売している商品(役務)、今後想定しうる紛争等も勘案した上で、出願の都度、依頼者の方とじっくりと打合せを行った上で決定しています。

 特にタイでは、日本よりも指定商品の範囲を具体的に記載しないと、受け入れられないという事情があるため(例えば、日本で受け入れられる指定商品「化粧品」が受け入れられず、「口紅」「洗顔クリーム」「マスカラ」等具体的に記載する必要がある等)、タイ独自の調整を行っています。

― タイではアルファベット3文字の社名は登録にならない?


 商標の究極的な機能(存在意義)は、他人の商品と自分の商品を区別する機能(自他商品識別機能)です。したがって、そのような機能を発揮し得ない商標は登録になりません。

 例えば、指定商品「りんご」に対して、「アップル」という商標を記載して出願をしても登録にはなりません。それは、「りんご」に「アップル」と書いてあっても、単に「りんご」の説明を英語でしているにすぎず、誰の出所に係る「りんご」なのかという機能を発揮できないからです(一方で、同じ「アップル」という名称でも、これを果物と全く関係ない「コンピュータ」等に使用する場合、識別力が生じますので登録になります)。

 また、極めて単純な商標(例えば、単に「A」1文字だけを普通に記載した商標)も識別力を欠くため登録にはなりません。「どこまでを『極めて単純な商標』(=識別力なし)というか」の判断基準は、国によって違いがあります。

 例えば、日本においては原則としてアルファベット2文字以下であれば識別力なし、3文字以上であれば識別力あり、という運用が採用されています。他方で、タイにおいては原則として、アルファベット3文字も識別力を欠く、という運用が採用されています。

 ここで、「さっき、タイで『TNY』(=アルファベット3文字)について商標権を取得したと言っていたじゃないか」と、疑問をお持ちになる方がいらっしゃるかもしれません。実はこの商標が登録になったのには理由があり、「TNY」という文字列に当社の「ロゴマーク」を組み合わせることによって、識別力を発揮可能な形で出願したのです。したがって、厳密に言えば「ロゴマーク+TNY」という形で登録を得た、ということになります。

 このように、アルファベット3文字であっても全てが拒絶されるというわけではなく、ロゴを組み合わせたり、図案化する等の工夫を凝らすことによって、何らかの形で商標権を獲得できる場合もあります。

以上、商標権の基本的な内容についてご説明致しました。

今回のポイントは、

①商標権は「商標」と「指定商品役務」との組合せであるという点

②商標の最も重要な機能は、他人の商品と自分の商品を区別する機能であるという点

です。次回も、引き続き商標制度についてご説明させて頂く予定です。

共同代表 日本国弁護士・弁理士 

永田 貴久

タイにおける商標・特許等の出願、知的財産権の権利行使その他の知財業務のほか、会社設立、労務対応、合弁契約書等の各種契約書の作成、M&A等のタイ法に関するサービスを提供。

HP: http://www.tny-legal.com/ 

TEL:+66(0)2 117 0798

問い合わせ先:info@tny-legal.com

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